東京に新しい「楽しい」を - 東京G-LINE

都心のど真ん中に緑のループ?

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 東京のど真ん中に一周14.8kmの緑のループができたら、人々の生活はどれだけ変わるだろうか?その緑のループにはあらゆるところからアクセスでき、そこでは、都心にいながら子供が自由に走り回り、大人達も喧騒を忘れ寛いでいる。もちろん車なんて走っておらず、バランス良く植えられた木々により、空気が綺麗なだけでなく、日陰が十分に生み出され、お年寄りも快適に散歩している。程よい密度で設置されている飲食店では、コーヒー片手に読書をしたり、絵画を楽しんでいる人もいる。犬の散歩の途中に友人に会い、そのまま遅めのブランチを楽しむ。車のない環境が、こんなにも快適で静かであることを人々は初めて知った。

 

都心環状線一周全部公園に

それが東京G-LINE 

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 都心環状線は一周14.8km。都心3区の主要どころ、日本橋、京橋、銀座、汐留、東京タワー、霞ヶ関、皇居、全てを繋いでおり、ここを一周するだけで、多くの観光スポットを網羅することができる。そんな一等地が緑に溢れ、自由に歩き回れたらどうだろうか?オープンカフェも狭い歩道にギリギリ張り出し、排気ガスを吸いながら食事するのではなく、公園の中にゆったりと席が設けられ、鳥の囀りを聴きながら寛ぐことができる。

 これは、車のために造られた道路を、スケール感を全く無視して一時的に歩行者に解放する「歩行者天国」とは全く次元の違うものである。歩行者のために設計し直され、快適なスケールに調整され、緑溢れる環境が喧騒も暑さも忘れさせてくれる。それは冬であっても、同様の魅力を創出することができる。

 アクセスランプは既にバリアフリーで程よく設置されており、街のどこからもアクセスすることができる。車を気にしながら歩道を歩くことに疲れたら、さっと東京グリーンループに上がり、移動も楽しめばいい。

 するとどうだろう。これまで迷惑そうに背を向けていた沿線の建物が東京G-LINEに向いて開きだす。公園に直接アクセスできる贅沢な住宅やオフィスが新しい東京のライフスタイルのトレンドとして世間で話題になり、お洒落なカフェやレストラン、バーなどがバランス良く建ち並ぶ。商業化しすぎないように程よく規制が掛けれるが、同時に様々な交流イベントがひっきりなしに開催され、大人から子供まで常に賑わいの絶えない場所になる。

 

日本橋上空の高速道路を地下化?

 

 私は学生の頃、国土交通省の支援の下、地域と一体となって設立された「日本橋学生工房」という街づくり団体の代表を務めていた。複数の大学の学生が実際に日本橋に設けられた事務所にほぼ住むような形で、地元の方々と交流を深めながら日本橋という地域のあり方、そして実現のための行動の仕方を議論し、提案してきた。そのため、日本橋には人一倍想い入れが強い。

 そんな中、飛び込んできたのが「日本橋上空の高速道路の地下化決定」というニュースである。3,200億円という巨額の投資に加えて、八重洲線の拡張等その工事費が更に膨れ上がる可能性、そして、その工期が20年近くになり得るという話で、つまりは20年近く日本橋は工事中となるのである。20年後の都市を想像した際に、この投資は果たして正解なのであろうか?

www.nikkei.com

 私が学生工房の頃(2003年)から、この日本橋の上の高速道路の問題は議論されていた。その当時は、地下化の他に再開発と同時に周辺ビルの中を通すというような案も検討されており、地下化の事業費は5,000億とも言われていた。しかし、日本橋に空を取り戻すことだけに、5,000億という巨額の投資を行うことに私は非常に違和感を感じていた。また、同時に、都心環状線の周りに中央環状線、外環、圏央道とつくられていく中で、本当にこんな小さな都心環状線は必要なのか、という疑問を抱いていた。

 その後、ニューヨークへ移住した私は、使われなくなった鉄道高架橋を公園に変えた「ハイライン」がその周辺の街のイメージを一変して、今やセレブ達が訪れるような街へと変貌していく様を見る事ができた。たかが公園、されど公園。極度に美しく整備された植栽、ランドスケープに加えて、程よく多様なアクティビティが実施されているそのハイラインは、周辺の不動産価値を極端に高め、それまで誰も近寄りたくなかった危険地帯をマンハッタンで一番住みたい場所の一つに仕立てあげたのである。その時、「正にこれこそ都心環状線のアップデートに求められているものだ」と確信した。同じお金をかけるのであれば、その何十倍もの経済効果のある投資をするべきであり、それが一箇所でなく、東京全体のライフスタイルが生まれ変わる程の迫力が必要である。

ny-pg.com

 ニューヨークのハイラインは12丁目から34丁目までを結ぶ2.3kmのものであるが、その進化版を都心環状線の14.8km、しかも完結したループで実現できれば、その魅力は底知れず、東京の持つ様々な問題の解決策となるであろう。3,200億円はこのように使うべきではないだろうか。

 

 3,200億円以上という額とその工期、そして100年に一度くらいしか起きないこのような東京の大規模更新のチャンスを現状維持を元にした制約の中だけでアイディアを限定するのはあまりにも勿体ない。各関係者のご尽力でここまで現実味が増してきた今だからこそ、次世代、次々世代へ残す遺産として何が最善かもう一度みんなで考えるきっかけになることを祈っている。

 

 どうして、東京G-LINEには価値があるのか、どのように実現できるか。そのことについて何回かに分けて、もう少し詳しく見てみたいと思う。